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2009年6月 3日 (水)

矢代秋雄さんの交響曲

日本の作曲界の大先輩達の中で、憧れ、尊敬してやまない人、矢代秋雄。
まだまだ若く、これから、という矢先に亡くなってしまったのは口惜しい限りですが。

矢代秋雄の作品は一通り読んできたし、様々な和声の理論書、関係文書もむさぼり読んだ。
(そのことはいつか詳しく触れたい)
その中でも、僕の人生に大きく影響を与えたのが「交響曲」だ。

僕は吹奏楽も指揮をする。
このオーケストラの形態を僕は好きだ。
そのための作曲もするし、条件さえ整えば他の演奏形態からのアレンジをするのもやぶさかではない。
(この「条件」が重要なのだが…)

この「交響曲」の吹奏楽編曲版も存在する。
それも、いくつも。
僕の知るだけでも5種類以上。
しかし、そのどれもが酷い、酷過ぎる。
中には有名な方もいらっしゃるし知り合いもいるが、あえて言う。
酷い。
好みの問題ではない。

「現代曲」と呼ぶよりも、古典的な理論に基づいた近代的な手法による作品、と呼ぶ方がふさわしいだろう。
そこここに斬新な和声法やメロディに溢れているが、至極自然で違和感がない。
なぜそこにその音があるか、楽譜を読みこむと必然の答えが返ってくる。

この曲が作曲されたのは1958年。
僕の持っているスコアは1959年初版発行、1979年第2版発行、の第2版を1984年に購入したものだ。
当時は勿論職人の手による浄書であろうし、清書も人の手による。
臨時記号も多く、リズムもオーケストレーションも入り組んでいる個所もある。
百戦錬磨のプロの手によっても、当時のこのスコアを完全に清書できたとは言い難い。
このスコアにははっきりいくつもの誤植がある。

作曲者が自分のスコアの音を間違ったのかもしれない。
或いは浄書屋が間違えたのかもしれない。
だがそのほとんどは修正できる。
ほんの数か所、「作曲者の勘違いではないか?」と思われる個所と、「矢代さん、どうしてこの音をお書きになったのですか?」と問いたい個所もある。
だが、世の他の様々な作品に比べれば極端に少ない。
苦悩の末に選びに選ばれた音たちには、作曲者の意思が縫いこまれているから。
僕が本当に憧れる、芸術の形がそこにはあるから。

アクセント、強弱、などの類も修正、或いは必然性のある加筆も可能である。
が、それは指揮者が現場で必要に応じてすればよい部分もある。
アーティキュレーションやフレージングの違いは修正しなくとも実演にそれほど影響しないところもある。
だが、
臨時記号のミスはほとんど解決できる。
音部記号が間違っている個所が数か所。
それらもほとんどが確信を持って修正できる。
少なくとも「音程」に関する間違いのほとんどは修正できるはずなのだ。
それを放置してただ書き写すだけ、など、模写よりひどいではないか!

原曲と違う形態で演奏する以上、作曲者の意図を損なわないように留意しながらも編曲者の好みや技量も表れよう。
だが、音の間違いをこれほど放置されている編曲は珍しい。
それを高いお金を出して演奏するのは愚の骨頂。
大好きな曲だけに、腹が立ってならない。

ここまで怒りを表に出すのは、僕にしては珍しい。

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コメント

いやあ、熱いですね。
専門的なことは深くはわかりませんが、この曲に取り組んで本当に良かったなあと思います。
一つの動機から、ここまで深く複雑に明快に音楽を構築できること、それを可能にする技術、こだわり。
音楽の世界で「技術」って、変な偏見ありますけど(「技術だけの演奏」みたいな)、技術がなければ絶対進歩はないし。
だから、あえてそこまで言いたくなる気持ちもわかりますよ。私なりに。

投稿: TIMP@ふくしま | 2009年6月 3日 (水) 02時16分

吹奏楽編曲には各バンドの事情や個性が如実に表れちゃうわけで、それ自体には好みや方法論もある。
だから表立って批判したり否定したりすることはしない。
でも、各オーケストラや指揮者によってまた理想や方法論も違うので、“ある程度”楽譜や音楽に変更が加えられることもある。
それもまあ、“ある程度”当然。
でもね、この曲の編曲はそれ以前の問題。

まるでお料理のレシピで「ここでヘアクリームを入れます」って書いてあって、何も考えずに「ヘアクリーム」を入れちゃう。
前後の文章・料理の種類からここは「生クリーム」が正しいって言うのはわかるはずなのに。
それを「ちょっと変な味だな」と思いつつもそのまま食べちゃう。

今まで僕は何度もこの曲を演奏してきた。
極力“正しく”演奏してきたつもりだが、見落としもある。
今回その6種類の楽譜を比較検討することができて、初めて見つかったものもあったのです。
演奏の音を聴いて、なぜ気がつかなかったのか…

強い自戒の念を覚えます。
というわけで、反省の意味も込めてこんなことを綴っちゃったわけです。

投稿: YOU | 2009年6月 3日 (水) 10時51分

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