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2010年2月21日 (日)

迷走するサラバンド その2

作曲者は、
「・・・その歌や踊りが長い歴史の中で…(中略)…徐々に変質しつつ進化した軌跡を表現しようと試みた・・・」(スコア序文より抜粋)
と言っています。
「サラバンド」が実際にどんな民族によって創造され、どんな時代のどんな喜びや悲しみを反映し、どんな文化を吸収し、どんな流れに翻弄され、そしてどこに行きついたのか、を4分半の中であまねく、そしてつぶさに語ることは難しいでしょう。
それよりも「それを歌って踊った人間たち」の苦悩や想いに思いを馳せ、その一端を抽象的に描いたのではないか、と想像しています。
(これからこの曲を読んでいくうちにまた印象も変わるでしょう。また新たな発見や思い違いもあるかもしれません。あくまで僕個人の“第一印象”、です)

冒頭はd mollで典型的なサラバンドのモチーフで始まります。T.Sax.とB.Sax.の掛け合いで始めるなんてなかなか洒落てますね。同音(D)から始められ、4小節のテーマ(Theme1)が流れます。B.Sax.の音形はD-E-F-G…と続く音階の形ですが、主和音Dm(I)と同主長調からのS和音(+II(+IV))のカデンツによる伴奏です。ヘミオラの要素も感じられます。1小節目の2拍目にはサラバンドの特徴のアクセントがありますが作曲者は2小節目のほうにアクセント感を求めています。中間部(F)の1小節目との違いを意識するのか、それとも統合するのか、狙いはどこにありや!?音程の感覚もフレーズの感覚もごく自然ですが、次の4小節目!
本来ここはdim.で落ち着いて半終始、或いは終止、と行きたいところですが、出てくる和音はEs-A-D。いきなりEs-Aで減5の音程の洗礼です。そして、その音を半音で修飾する、呻きのような動き。更にD音の上下に刺繍してのたうつようなCla.の動き。これらはいずれ来る苦悩への「予感」に思えると同時に、この曲の重要なモチーフであり、この後も幾度となく登場します。
ここは今までの流れを断ち切るかのような音楽(3小節目のdim.を打ち消すかのような)が肝心。音量以上に、音楽的には強いアクセントです。ちなみにEs-Dの7度の音程は実は中間部のEs durに聴こえるEbM7(Es-G-B-D)の明るい響きへの予感も秘めているのかもしれません。(この後コードネームの“b”は“♭”と読み替えてください)
5小節目からはTheme1の後半。d moll主音(D)に戻ります。前半とは異なりテーマも予感に呼応するかのようにcresc.を伴って8小節目へ入ります。
8小節目は「不安」の減5度音程(As-D)から始まる二つの律線が、半音上下を縫うような先ほどのモチーフを用いてリフレインします。これに掛け合いで現れるA.Sax. Cla. Fl. のフレーズには減5度のジャンプが含まれています。8小節目で一気に厚みを増して、9小節目で一旦音量をmpに戻し、10小節目のフルサウンド11小節目の「決め」でプロローグを終えます。
このプロローグでは、やはり素朴なサラバンドのテーマと「不安の予感」の部分の対比が重要ではないでしょうか。そしてこの短いプロローグでは今後登場する多くの音要素が断片的に提示されています。
8小節目と9小節目の変化はスコアの見た目以上に効果を狙っているように思えます。すなわち、8小節目はサクソルン族にいくつかの楽器が段階的に参加し見た目よりも薄い印象、9小節目からは転じてトゥッティの音圧、みたいに。実際、音域の広がりと持続音の響きで印象は大きく変化することと思います。それから10小節目3拍目の上行形には特徴的な音階(下記)が断片的に表れます。(この音階、重要な要素でよく登場するので、今後S.T.(Scale Theme)と記します) さらにこの六連符、とても重要なフィギュアです。S.T.の動きの後、主要音を刺繍するメロディの要素をもう一度提示します。この曲を司る要素の一つであり、曲の最後(Pic.)にて蘇生されます。
Fig09
(A)へのブリッヂにはサラバンドのメロディをEup. A.Cla. T.Sax. がごく断片を演奏します。この音域の楽器をこれだけ重ねるという事はソロのキャラクターを求めているとは思えず、オケで言えばV.c.tuttiのような、音量は大きくないがVolume感のある音、が想像されます。しかし、すぐtuttiで奏されるアコードを考えるとソロのように扱うという解釈も成り立つかもしれません。その場合は楽器を絞ったほうがいいかもしれませんね。
ちなみに和音の支配音はもちろん“D”。D-Gの解決をもってg mollの主部①(A)に突入です。

(A)~
「鋭利なリズム」を強調するためにどんな工夫をするのか、アイディアの膨らむところです。2小節の短い前奏中のみリズム形に全てアクセントが付いています。鋭さが出ないようならあえてこれを無視して他のアクセントに合わせる手もあります。「全部にアクセントがある」というのは「全部にアクセントが無い」のととても似てしまうんです。でもやはり、ここは重くならないようにきわめてセパレートの上で淀みない全アクセントを聴かせるべきでしょうね。3小節目からは直線的な“D音”の持続から和音の刻みに伴奏は落ち着き、メロディ(Theme2)が始まります。和音のアタック群と掛け合いになっていますね。このTheme2にもサラバンドの要素が含まれている…というのは深読みのしすぎでしょうか?
Fig07
和音群には上記譜1小節目、メロディ群には上記譜2小節目、の倚音的要素が含まれています。そしてこの動きには意外と重要な意味が隠されているのです。
(A)の4小節目、持続音のない乾いた世界に初めて出る持続音。強い印象をオーディエンスに与えたいところです。6小節目はこの小楽節の頂点。三連符の刻みの中のスラーのアーティキュレーションは冒頭4小節目で既に提示されている素材(深読みすればサラバンドのアクセント特性)。強調するならスラー前の音は短く。全体のヴォリュームを重視するなら全体を長めに。人数の多いCla.Sax.達でどこまで繊細な表現ができるか、腕の見せ所(?)。大事なリズムフィギュアなので曲全体を通して表現を統一しなければ一貫性を欠くでしょうね。この小節の和音はA7(b5)下記譜のように入れ替えればEb7(b5)
Fig03
上記の譜面では違う音(C7b5)ですが同じ構造です。この和音はとにかくこの曲で一番多用される(と言うかこの曲を支配している)和音です(今後は和音主題としてC.T.(Chord Theme)と記します)。そして直接主和音に解決です。またEup. Acla. T.Sax. の下行形は先ほどの音階S.T.
7小節目からのTheme2は今度は開始1小節で変化して9小節目が頂点。(和音はC.T.(C7b5)8分音符の下行形はS.T.)そして9小節目と10小節目の上行形三連符もやはりS.T.。 1オクターブずつ下がってくるもののまったく同じ構成音です。これでTheme2の短い提示を終えdim.で(B)に入ります。最後の和音をC7b5ととらえれば半音下、F#7b5ととらえれば5度上にB7で始まる次のセクションへ。

(B)~
作曲者によればこのセクションは「錯綜する声部のバランス」。 2小節間ははっきりとtuttiサウンドではない、はっきり声部のコントラストが描かれています。Eup. A.Sax. T.Sax. はmfとespress.の指示。Theme1を意識したもので、リズムにサラバンドの特徴を垣間見られます。サクソルンの音色で統一し、オケで言えばVln.抜きの弦楽器群。Vla. V.c.的な扱いですね。低音部には表情の指示、con suono ma non legatoがあります。 「よく鳴らして、でも音を繋げないで」といった感じでしょうか。伴奏部ははっきりmpの指示。でもメロディとの対話が書き込まれており、2小節目のラストでは合体。この2声部間の対話を強調すると3小節目でのサウンドの変化が出にくいかもしれません。バランスが大切になるでしょうね。
“Ges”を倚音として和音はC.T.(B7b5)ですが、B7の“F#”としてB7-B7b5の倚和音的に感じたほうが音楽の性格が理解しやすいかもしれません。 このセクションでもほぼこの和音しか出てきません。
3小節目からは全奏による様々なモチーフの錯綜。Fl. Ob.達の8分音符はS.T.によるフレーズ。Cla. Sax. Trp. Hrn. の三連符は刻みと半音階。Hrn. Trp.2,3 はオーケストラ的な独立した扱いにも見えます。Trp.の音はHrn. とのバランスによって各バンド調整すべきでしょうね。メロディラインを担っているのと同時にバランスの繋がりが面白いですね。Trb. は和音の持続音。これは冒頭4小節目で初出の減5度であるのは言わずもがな。低音は和音の決定権を持ちつつ全体に揺らぎを与え。これらの要素をまったく融合させ一体感をもって作るのか、それぞれの要素の特徴を目立たせて一つのスパイラルを作るのか、ここも考えどころ。サラバンドテーマと主部①の第1要素「A」の変化形との融合と、主部第2要素「B」へのアプローチがこのセクションの役割です。
和音は、B7-C.T.(B7b5),B7-C.T.(B7b5)→短3度上がってD7-C.T.(D7b5)→C.T.(C#7b5)-Ddim.→C.T.(G7b5)と、どんどん発展していきます。音楽的には間違いなくsempre cresc.。 2小節の主従のある音楽の後、3小節目からは各声部の錯綜を強調して、それぞれにキャラクターを与え立体感をもってcresc.させるのが王道でしょうか。「うねり」みたいなものが出ればよし。逆に、絶対的な音圧感は減ると思われますがその後の展開を考えるとここで必要なのは「錯綜する様々な想い」

(C)~
前のG7b5からF#7b5への半音進行(C7b5ととらえれば5度進行)で主部①第2要素「B」に入ります。
テンポを落として突入する、言わばAgitato主部における中間部分。悶えるような、刺繍形のフィギュアとS.T.を融合させたメロディ。この掛け合いの持続音は再三登場する、冒頭提示のE-Bの減5度。上行の音階ははっきりとS.T.の音形。音の要素を入れ換えても、この4小節は全てC.T.のF#7b5(=C7b5)に帰着します。が、3小節目でコンプレスされる掛け合いの持続音は1音上がってFis-Cの減5度。発展している、と考えるのならば和声も転換されている、と考えて表現しても面白いのかもしれません。苦悶の表情を浮かべ呻き悶えるかの様な部分はAgogikも含めた表現の自由がかなりありそうですね。しかし、16分音符のスタイルはくっきり強調するべきだと思います。「16分音符中心のアンサンブル」と作曲者から注釈がありますが、その具体的なメッセージの中から想像すべきもののヒントはは、この苦悶と怒りにあるのかもしれません。
5小節目からの和音は引き続きC.T.(Ab7b5) ただしHrn. Sax. Fl. etc. の上行への倚音とコードにはincalorireの指示があります。直訳すれば「熱くなる(する)」。もう少し「怒り」の要素が入ってもいいと思います。延ばしの音がどんどん短くなっていく仕組み。当然テンポアップのニュアンスも秘めていますがその後の3拍のaccel.の為に直情短絡に陥らないようにするべき。引き延ばし音が徐々に短くなって、最後の鋭い16分音符(Pic. Fl. Ob. EbCla. Xylo.)にエコーのように残るHrn. Trp.2,3 はとっても効果的です。

(D)~
テンポを最速に戻して前半最後のセクションへ。Agitatoにはテンポアップの意味も含まれることが多々ありますが、作曲者は実際にスピードを上げることは望んでいないように思われます。焦りや不安、その中を進んでいく推進力、がその意味するところではないでしょうか。調性は進んで(g mollに戻らず)Fis mollに解決。2小節ですぐにa mollに、転換のスピードが明らかに速まってクライマックスが近いことを知らせます。この二つの調の主音(F#とA)が(A)のg mollに対して刺繍するようになっているのは、テーマのフィギュアを意識したのかどうかは不明です。でも、そう考えると面白いなぁ。とうとうコード進行にまで融合されてしまうメロディ要素。
ここで僕が必要だと思うのはフレーズごとに存在し融合されたサウンド。弦楽器に例えるのが無意味だとわかってはいますがイメージが湧きやすいのであえて例えると、高音木管群はVln.で中音木管とEup.はVla. V.c.。 はっきりとしたリズム群と相まって芳醇なサウンドが期待できます。音自体の目は詰まっていませんので5小節目以降自然に厚みが増していく仕組みです。5小節目からは基本的にはCmですが(A)で主和音Gmに“G-A”と入ったようにここでは“C”ではなく“D”からスタート。そしてそのまま下がっていきます(D-C-H-B-A) 7小節目でAsまで下がるとそこはC.T.(Ab7b5)。 ラストはincalzando(熱して、急き立てて)でg mollに回帰してGm上のテンションコードでブレイク。低音の「“G”にまつわるエトセトラ」はもちろん主題のフィギュアの断片。ちなみに5小節目のEup.のEs音はオクターブ下のほうがいいでしょうね。最近の楽器なら大丈夫。

(E)~
「Graveな表現」という事は「荘重に」という事でしょう。そしてそこから考えうる表現力の広がりが必要。ただ重っ苦しく演奏するだけでなく、この短い楽節にある様々な要素を意図をもって表現できたら、きっと個性にあふれつつも説得力を失わない演奏ができるでしょう。
サラバンドの特徴で書かれたTheme1。そのリズム要素でスタートするのですから意識するべきは1拍目からの流れとしての2拍目。唐突な2拍目からのスタートは点睛を欠く気がします。とすると(E)の直前はどう処理すべきか?
(E)の前の8分休符と(E)冒頭の4分休符をまとめてG.P.にしておもむろに始める、というのが一般的になりそうですが、ちょっと上記も踏まえてみると疑問も感じます。僕はおそらく(E)の頭に熱をもったまま飛び込み、1拍目でたっぷりGraveを見せたいと思いますが、皆さんはいかがでしょう?
和音はここでもC.T.(D7b5)。 重厚金管コラールから2小節目は突然“D”音のみの単音。 で、続く8分音符は前コードの分散和音。3小節目で“G”に回帰。tuttiでGadd/Fを経て4小節目でもうひとつの重要和音にて終止です。
Fig05
右の和音ととらえたほうが理解しやすいかもしれません。コードはDb7+#11(わかりにくいですね…根音をDesにした上記譜右の和音です)

続きは次回~

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コメント


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手マ-ンしまくってたら急に俺に乗ってきて、
俺のアバラ骨で素 股しだしてマージびびったぞ(゜ロ゜屮)屮
サキちゃんがやたらガリガリにこだわるワケ、把握w

投稿: おwれwのw骨wでw | 2010年2月21日 (日) 04時59分

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