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2010年3月 7日 (日)

迷走するサラバンド その4

(J)~
混乱によって発展していくのか、発展が混乱を招くのか、ちょっとおもしろいセクションです。主部①の「A」に対応する「A’」(L~)への発展する経過句の始まりです。
テンポはかなり抑えた四分音符=128で始まりますが気になるのはやはりAgitato non tantoの表記。「やり過ぎるな」と言うことは言い換えれば「きちんとやれ」と言う事です。(K)や(L)での確実な変化を殺さぬように慎重で正確な設定が必要でしょうね。和声的には先のC.T.(コードテーマ)を多用しています。すなわち、A7b5-C7b5-Eb#11/Db , C7b5-Eb7b5-F##11/Eが最初の4小節。Theme2を変形して小さな発展をしますが5小節目でもう一度もとに戻ります。この最初の4小節(2小節単位のフレーズで、丸々短3度上昇します)を発展と捉えて進化させるのかそれとも変化を抑えて5小節目のヴォリュームアップ(mpからmfへ)をきちんと意識するのか、やらなさ過ぎれば停滞し、やり過ぎれば色彩を欠く、難しいところです。5~8小節ではcresc.が続くことを考えるとここはかなり限られた範囲で効果的にうねりを出すことを心がけるべき。と、なれば取る手はそう多くありません。4小節目のリード群とタンバリンにdim.が無いのは意味があるのかないのか、“解釈”の余地がありますね。
後半4小節はずっとcresc.です。小さなdim.を入れつつ、前半のうねりの周期が短くなり持続するのを強調するもよし、逆にそのうねりを消して音量の変化を強調するもよし。うねりを強調すれば当然音量の変化は見えにくくなるので全体的な構成を鑑みればやり過ぎは禁物。S.C.(スケールテーマ)やサラバンドの素材も現れ、和声の主題も発展を続けます(A7b5-C7b5-Eb7b5 , D7b5-F7b5-(B7)-B7b5-A7b5)が、和声自体は変化のないC.T.です。

(K)~
混乱がGmの解決によって終結し直線的な6小節(2小節×3)の経過句に入ります。
低音B♭の上にGm-Bbm-Dbmが踊ります。スラーを排したサラバンドのテーマが幾分硬さを増して現れます。テンポはPiu allegro(138)にアップしますが、一般的にはAgitatoは継続です。Piu Allegroは「さらに快活に」ですから、Agitatoを打ち消すような物言いを含んでいません。この曲でのAgitatoはテンポの変化よりも「焦り、不安」の感情を示しているようですから。しかし、この部分でむしろクールに、ストイックに書いてある音とリズムを演奏すると「直線的」なものが表現しやすいかもしれません。

(L)~
いよいよAgitato主部の再現です。調も戻ります。でも、たった5小節の回顧。この、旅した末に主題に帰り着くのをどう表現するか。細かく考えずに一気にここまで作り上げるのも手でしょう。前節をあまり激さずに作ると(L)への入りは強調されるもののここに至る説得力はちょっと色を失います。ここに書いてあるcresc.&dim.はフレーズ的な欲求によるもの。音楽全体のもの(Grand cresc.)と勘違いすると音楽は一気に生気を失います。よく聞きますね、そんな演奏。
5小節目であっという間にrit.してAnimato部分に進みます。このrit.かなり急激にかける必要がありますが、①遅めに始めてrit.②あくまでテンポで入り急激に遅くする③この部分だけ重く遅く演奏する、等考えられます。次のAnimatoの奏し方にもよりますね。ここは2/4の躍動感が欲しいところ。3連符に下手にヘビー感を与えると(M)の2小節前で再びテンポを取り直す演奏になり、かなりくどくなります。Animatoでもテンポを取り直し、ここでもテンポを取り直す、では音楽があまりにもつながらないのでどちらかが良いでしょうね。譜面から見る限りはAnimatoの感覚を優先したいように僕は読みますのでAnimato前のrit.には少々けれん味を付けると思います。energicoで文字通りエネルギッシュに奏するためにも。
Animatoはもちろん(E)の5小節前に呼応します。言うなればDM7(Dのメジャーセブンス)から始まり、C#-C-H-B-Aと下がっていきます。この、初めの長7度の音程、前奏でも中間部でも印象的に扱われ、とても印象深いものです。自然な説得力のあるaccel.で行けるといいですね。淀みなく。

(M)~
前小節をキメ過ぎると必要以上に空間が開き、とってつけたようなエピローグになるような気もします。(E)の前もそうですが、一旦破壊的に最大音量に到達し、無理やりブレイク感を強調して、静寂の後改めてスタートすると分断された感じはよく出ます。実際に演奏する際にはちょうど1拍ほど休符が増えます。多分合わせやすいし。
でもそれはやっぱり違う気がするなぁ…楽譜通りの一瞬の間の中に静寂とスピードを封じ込めGraveに入るほうが良いように思います。突き進んできたAgitatoのエネルギーをどこかで継承したままGraveに突入。楽譜にカンマ(’)やスラッシュ(//)が入っていたら前述の手を使うと思いますが。まあ、いろんな読み方奏し方があるでしょうね。
構造は(E)と同じで、それに冒頭で提示された刺繍音を使ったフィギュアが登場します。実際演奏するとこの3小節目の刺繍フィギュアのおさまりどころがなかなか難しいのが分かるでしょう。
最後のピッコロにはなにも言う事はありません。奏者にはどう演奏するであれ、この曲の事を知った上での想いを乗せてほしい、それだけです。

「迷走するサラバンド」、実際に演奏してみると、あっという間の4分です。細かいこだわりを入れても普通なら素通りされてしまいます。でも、ひと夏多くの団体が演奏するのがコンクールの面白いところ。細部までこだわりぬいた面白い演奏がたくさん出るといいですね。目先の、短絡・直情な表現を繰り返すのではなく、全体の構成を考えた上での表現で。
僕もこの曲を演奏する機会があるかもしれません。コンクール課題曲、という看板が無くとも十分演奏する魅力にあふれた作品だと思いました。願わくば、もっと長い曲でこの作曲家の音楽を演奏したい、です。

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コメント

最後のピッコロには何もいうことはないって…
どう吹いていいか全くわからないんですよね…

説明だけだと…読んだけどちんぷんかんぷんでした…すみません…

合宿の時説明お願いします教えて下さい~

投稿: ぴ | 2010年3月19日 (金) 10時17分

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