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2010年4月14日 (水)

ショパンの森

ポーランドが生んだ偉大な作曲家、フレデリック・ショパンが生まれたのは1810年の3月1日。
今年はちょうど生誕200年。
と言うわけで今年はそこでもここでもショパンが聴ける。

“僕の音楽はどこにある?どこへ行く?”そんなあてどもない、そして音楽家なら誰もが背負いつついく命題に、時々深く悩む。
いろいろ試行を巡らせながら、後悔したり反省したり落ち込んだり、小さく前向きに向き直ったりしながらつらつらショパンを弾いた。

思いもかけずボロボロ涙が出た。
弾いた曲は、ワルツを数曲、バラードの1番、幻想即興曲、Esdurのノクターン、その他…
その中のamollのワルツを弾き終わったらポロポロ目から水が出た。

僕が音楽の道に深々と入り込んでいったのには幾つもきっかけがある。
その一つが小学校からの友人のピアノだ。
彼とは彼の父親とともに小学校の頃は釣りばっかりして過ごした。
その彼は、吹奏楽部だった姉の影響で(多分)子供の頃からピアノを習っていたらしい。
“らしい”というのは、小学校の頃には「そんな女みたいな習い事」は秘密にしておくのが一般的(だと思っていたバカ小学生)だったので、中学生になるまでそんな才能があるなんて全く知らなかったのだ。
その彼が中学校の何年生だったか、ある冬の日に、ストーブで窓の曇った音楽室でピアノを弾いた。
クラシックの“ク”の字も知らない5厘頭の野球部員だった僕だが、その衝撃は忘れない。
「右手が4つの音を弾く間に、左手は3つの音を弾くんだよ」と彼は教えてくれた。
彼の弾いてくれた曲はショパンの「幻想即興曲」とムソルグスキーの「展覧会の絵」
「左手が超高速で動かなきゃならないんだよ」と言いつつ展覧会の絵の中の「バーバ・ヤーガの小屋」の解説をしてくれたのもはっきり覚えている。

その時に思った。
死ぬまでにいつか、この曲を弾けるようになってみたい…と。
それも彼よりも上手に。

その後も不思議な出会いと運命でいつの間にか僕は音楽大学へと進み、音楽の道へどっぷりとはまっていく。
その中で、「ピアノ」と言う楽器にはいつも憧れていた。
ちなみにそれまで僕はピアノを習ったことなどまったくなく、もちろん家にもなかった。
音楽大学受験の半年前にレッスンについたが、家には壊れてシ♭の音が出ない電子オルガンがあるのみ。
どうにか大学には滑りこんだものの、ピアノなんて上手くなるはずもなく、試験用のソナチネを弾くのが精一杯だった。

でも、ピアノに自由に触れられるのは楽しかった。
和音が出る!高い音も低い音も出る!
自分の思った通りのオーケストラがそこにある!

片っ端からいろんな曲を弾いた。
指使いもハノンもバイエルも関係なく、ただただ音を並べるだけ。
ドビュッシーの和音にシビれ、ベートーヴェンにあこがれ、シンフォニー等のオケ曲もたどたどしく弾きまくった。
それはまるで目覚まし時計を分解する子供のように、楽しい驚きの連続だった。
ただ、僕のテクニックでは分解はできても組み立てられない…
元の、本来の形、テンポなどでは到底弾けない曲ばっかりだった。

ショパンの曲を分解していると、よくわからない部品がいっぱいある。
「この部品は何のためにあるの?」
いつか、真っ白い雲が描かれている風景画に近付いてみたら、雲には無数の黒い点が描き込まれていた。
その黒い点が、一見矛盾するようで、その実「真っ白」には不可欠のものだと知った。
きっとショパンも、一見矛盾するような音でも流れの中でそれは「真っ白な雲」を描き出すに違いない。
そう感じていた。

それから、指揮の道を志し、この道を歩いて来て、その間にも数え切れずピアノを弾いて来た。
そして気が付いたら、僕は幻想即興曲を弾いている。
上手ではないかもしれない。
でも、僕は大好きなショパンを弾いている。
あの時のイガグリ頭のニキビ面の中坊が、今どうにかこうにかショパンを弾いている。
自分がこんな曲を弾ける日が来るなんて…
幸せすぎて水が出た。
嬉しくて哀しくて、ボロボロポロポロ水が出た。

今日何気なく弾いた曲たちは、みんないつかの憧れだった曲ばかり。
あの頃よくわからなかった部品も、今なら手に取るようにわかる。
いろいろ悩みは尽きないけれど、それでもやっぱり僕は幸せだ。
今日も、きっと明日も音楽ができる。

いつか必ず、今弾けない曲も弾いてみせる。
そして“今の想い”を懐かしく思える日がくるに違いない。

いつかきっと、あのオケだって、振る日が来るに違いない。

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

夕さんはロマンチストなんですね

投稿: もち | 2010年4月14日 (水) 14時21分

どこにいくのかまよってるうちに白いくものなかでないていた

投稿: ぴんく | 2010年4月15日 (木) 00時53分

先輩!初めてブログを拝見いたしました!先輩の歴史が垣間見えて感動いたしました♪またコメントしに来ますね☆

投稿: Fagotto | 2010年4月15日 (木) 05時22分

あたしもせっかく家にピアノがあるのに
最近触ってあげてない…
触ってもほとんど弾けないんだけども…

でも、弾いてみたい曲はいーーーっぱいある…

いつか弾けるようになると信じて…練習してみようかな…

投稿: ぴ | 2010年4月15日 (木) 14時12分

ごめんなさい、思いきり名前の字を間違えてしまいました。
友さん、ですね

投稿: もち | 2010年4月15日 (木) 22時29分

幻想即興曲、懐かしいです。
高校生の頃、音大受験をするフルートの先輩が音楽室で弾いていたのを思い出します。
私もやってみたくてすぐに楽譜を買いました。
ショパンのワルツもいくつか弾きました。
あの時はたくさん練習して弾けるようになったけど、あれからもう十何年もピアノには触っていません。
もう指は動きません。
大人になって、たくさん迷って、いろんなものを失ったような気がします。

投稿: ずま | 2010年4月16日 (金) 16時37分

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