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2010年11月19日 (金)

レコードとCD、或いはデジタルとアナログ

音は基本的に空気の振動です。
だから音楽の演奏は空気の振動が耳の鼓膜を揺らし、その情報が脳へ届くのです。
音楽や会話やその他いろいろな音を記録(録音)して再現(再生)することに、人は苦心してきました。

口伝えでしか伝承できなかった音楽を“記録”した画期的な発明は“楽譜”です。
ある音楽を再生するためには、“楽譜”自分で演奏するか演奏家を呼んで演奏させるか演奏会に足を運ぶか、が一般的な方法だったのです。
その頃の人々は我々がCDを買うように新譜を手に入れては流行の音楽を楽しんでいたのかもしれません。

もっと気軽に音楽を楽しむことはできないだろうか?或いはその他様々な欲求と要求によって“自動演奏楽器”が登場します。
オルゴールや自動演奏ピアノやオルガン、後にこの分野は独特の進化を遂げてオーケストラまで自動演奏させたりする“装置”もあったそうです。
演奏者独特のニュアンスや音楽性をある程度まで正確に記録することも可能になり、“生演奏”の再現に一歩近づいた物もあります。
ガーシュウィンが弾いたピアノロール(自動演奏用の記録紙)も残されていて、彼の楽譜の演奏の貴重な資料になっています。
文字通り生の楽器で演奏を再現できるのですから、現代のどんな優れた“録音”よりも“生演奏”を楽しむことができる、と言えるかもしれません。

さてさて、なんでこんな話をし始めたかと言うと、
「レコードのほうが音質が良いって聞いたんですけど、本当ですか?」
との質問を受けたからです。
う~ん、難しい…
ただ、「レコードのほうが音質は良い」とか「レコードの音は暖かい」と言うのには理由があると思うのです。

初めて空気の振動を記録することに成功したのは、かのエジソンです。(他にも同時期に何人もがチャレンジしているようですが、まあ一般論、と言う事で)
簡単にいえば、①音で空気が振動し②その振動を漏斗型の集音器で“針”に伝えて③その針でロウやカーボン板を刻んで溝を付ける、というものです。
その溝に針を通すと、①刻まれた溝を針がトレースし振動し②その針の振動を漏斗型の集音器から聞く、と言うのが再生の方法。
ただ、その振動はとても小さいので、電気的に増幅して記録・再生する技術も進歩して、現在のスピーカーやアンプへとつながっていくわけです。
物理的に溝を刻むのではなく、鉄粉を縫った薄いテープに、振動を磁気に変換して記録する“テープレコーダー”も普及します。
これらはすべて“アナログ録音”です。

利便性や携帯性、その他時代のニーズもあり時代は“アナログ”から“デジタル”へと移り変わります。
CD、MD、DAT、DVD、等は全て“デジタル録音”です。
というか、iPodをはじめ携帯プレイヤーやPCで扱う音楽データもほとんどデジタルですし、テレビやラジオも“アナログ”は消え去りそうです。

さて、やっと本題。
レコードとCD、どちらが音質が良いか?
レコードは物理的に針で溝を擦るわけですから埃や汚れでもノイズが出ます。
テープでも“ヒスノイズ”は避けて通れない雑音です。
これももちろん“音質”の要素(SN比)です。
デジタルで録音されたものは全て電気信号(オンかオフ、0か1の組み合わせだけ=デジタル信号)に変換(量子化)されています。
それを音信号(=アナログ信号)に変換して出力するのですからレコードやテープのような物理的ノイズはほとんどありません。
CDが出始めたときにはそのクリアな音に兎に角度肝を抜かれました。
しかし、それ以外にも“音質”の秘密があるのです。

アナログ信号である“音”をデジタル信号に変換するには“A/D変換”を行います。
「ある瞬間に鳴っている音」を数値に置き換えるのです。(=量子化)
時間は継ぎ目なく流れています。
その時間を切り取って記録するのです。
音の写真を撮る、ようなものです。
その切り取りを1秒間に何回行うか、を“サンプリングレート”という単位で表します。

例えば連続写真を撮ってそれをパラパラっとめくると動いて見えますよね。
1分間に10枚の写真を撮ってパラパラするより、1分間に100枚撮ってもっと高速でパラパラすれば、もっとなめらかに動いて見えます。
つまり、音もできるだけ細かい時間にたくさん切り取ったほうがなめらかになると言うわけです。

ちなみにCDのサンプリングレートは44.1kHz
1秒間に44100回“音の写真”を撮っているのです。
一般的に「録音したい音の周波数の2倍程度のサンプリングレートが必要である」とされています。
人間の可聴域は高音で20kHz程度とされていますからギリギリです。
このことから「CD等では超高音域の録音が苦手で、レコードのほうが優れている」という話が出てきました。
しかしそれは正確ではありません。
確かに一つの側面ではありますが、音質の“決め手”ではありません。
(「1秒間に何回」と言うときの表現にHz(ヘルツ)と言う単位を使う事があります。1秒間に44100回サンプリングする=44.1kHz、1秒間に44100回振動する音の周波数=44.1kHz、と表現が似ているので混同する人がいますが、別物です)

もうひとつ重要なのが“ビット”と“ビットレート”です。
簡単にいえば、切り取って記録する1回あたりのデータの数、です。
(ビットレートは単位時間当たりの転送量)
もうちょっと概念的に例えると「何色の絵の具で絵を描くか」とか「画像の解像度はいくつか」と言えます。
10色より100万色のほうが表現力は幅広いし、20メガピクセルより1000メガピクセルのほうがより緻密な画像になります。
音でも同じことです。
(“ビットーレート”はデータの転送量の単位なので“扱うデータ量”自体を表すとは限りません)

「じゃあ、サンプリングレートもビット数もガンガン上げればいいんじゃない?」
たしかに時間当たりのデータの総量が多いほど正確に元の音を録音できる、と言えます。
しかし録音の機械、録音するメディアのデータ搭載量・転送速度、再生装置の処理速度、等にはおのずと限界があり、闇雲に引き上げるわけにもいかないのです。
でも、技術の進歩と共に高い能力の機器、メディアは次々開発されています。

ところで、デジタルデータの一般的な技術の一つが“圧縮”
送信、放送、携帯、等の為に圧縮してデータ量を減らすのです。
テレビの映像・音声も圧縮されていますし、DVDも圧縮されています。
圧縮する際に出るデータの損失は再生時に様々な方法で補正されたり補填されたりします。
その技術がいくら上がろうとも、本来の音とはやはり違うのです。

圧縮による音質の劣化は明らかなのでデジタルとアナログに話を戻します。
デジタル録音はいわば「点」の連続です。
その「点」が細かくなればなるほど「線」に近付いていきます。
同じように、それだけでは「点」でしかない1枚の画像を連続して再生し、脳の残像を利用して動画に見せるのが“映画”です。
音もある意味脳の錯覚(と言うか残像と言うか)を利用して連続データに見せているだけなのです。
CD程度のサンプリングレート、ビットレートでも音楽が途切れ途切れに聴こえることはまずありません。
でも、脳はもしかしたらその“荒さ”を「暖か味」「なめらかさ」「柔らかさ」が少ない、と感じているのかもしれません。

はアナログの良さを完全に凌駕するものではなく、SACD(SuperAudioCD)やDVD-audioぐらいが標準になればいいんだけど…
一度聴けばその違いははっきり分かると思います。
DVDとBlue-Rayぐらい違います。
mp3等の圧縮モノなんて問題外。

結論的に、レコードとCD、どっちが音質が良いのか?
高性能のスピーカーとアンプ、理想的なリスニングポジションの環境、が整わないなら、言い換えれば一般的なスピーカーやヘッドフォン等での鑑賞ならば、CDで十分。
ノイズが少ない分デジタルに軍配が上がるのかもしれません。

それでもやっぱり、「キチンと聴くレコード」の音は好きだなぁ。
DVDとBlue-Rayの画質の違いに匹敵するぐらい、SACD(SuperAudioCD)やDVD-audioのような次世代規格がもっと普及するまでは、アナログを望む声はまだまだ根強いだろうなぁ、と思います。

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コメント

私の好きなミュージシャンは、
アナログ盤を作りたくて、
2インチのテープでレコーディングしたそうです。
(実際アメリカではアナログ盤が発売されるらしい!)
・・・それがどういうイミか私にはよくわからないのですが。

いずれにしても、音楽はLiveが一番!
なんてここで言っちゃったら、元も子も無いですね

投稿: Anton | 2010年11月21日 (日) 10時21分

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