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2014年4月13日 (日)

中山晋平さん

『カチューシャの唄』を演奏しました。
宮川彬良編曲。
弦楽器の和音伴奏、これが本当に良い音がするのです。
その、スコアのヴォイシング(和音配置)が本当に素晴らしい。
変な作曲のレッスンを受けるより、このスコアの秘密を紐解く方がどれだけ大きな収穫になるかわかりません。

さて、カチューシャの唄。
作曲は1914年ですから、なんと今年で100年!
AKB48の『EVERYDAYカチューシャ』でも出てきたカチューシャ。
100年前の日本でも、2014年の現代日本でも、同じように歌の中で可憐な少女の象徴として登場するのですね。

カチューシャかわいや わかれのつらさ
せめて淡雪 とけぬ間と
神に願いを(ララ)かけましょうか

…カチューシャはずしながら 君が不意に振り返って…
…カチューシャはずしながら 長い髪をほどくように…

聴くと、どちらもちょっぴり胸の奥がチリリとするのです。
作詞は島村抱月と秋元康ですが、やっぱり切ないメロディがあって生きるこの歌詞なのでしょう。

1914年に劇団芸術座の公演、『復活』(トルストイ原作)の劇中歌として発表され大ヒットした『カチューシャの唄』
ロビーに貼り出されたこの曲の歌詞を写そうと群がった人たちがその場で合唱を始めた、と言うのも有名なエピソード。

1888年に生まれ1952年に亡くなった中山晋平さん。
『シャボン玉』『砂山』『波浮の港』『東京音頭』『証城(證誠)寺の狸ばやし』『てるてるぼうず』等々、ヒット曲多数。
まさに日本が世界に誇るメロディメーカーです。

詩人野口雨情が亡くなった娘さんを想って作詞したといわれる『シャボン玉』
エピソードの真偽は確かではありませんが、歌詞の内容を見れば夭折した子を意識したのは間違いないのではないでしょうか。

シャボン玉飛んだ
屋根まで飛んだ
屋根まで飛んで
こわれて消えた

シャボン玉消えた
飛ばずに消えた
産まれてすぐに
こわれて消えた

風、風、吹くな
シャボン玉飛ばそ

野口雨情の娘さんが生まれてすぐに亡くなったのは1908年。
この曲の発表は1923年(詩の発表は1922年)。
雨情はもう一人娘さんを、1924年に2歳で亡くしています。
その曲に中山晋平は悲しいメロディではなく、讃美歌のように美しい温かい長調のメロディを書いています。

実はこの曲、1866年作曲の讃美歌『主、我を愛す』にとっても似ています。
それを知って作曲したのかどうかも定かではありませんが、とっても似ています。
さらにこの讃美歌、小説中で「若くして亡くなった少年がいまわの際に口ずさむ歌」が元詩だそうですから、あまりにも共通点が多いのです。
それでも『シャボン玉』は野口雨情と中山晋平の音楽、だと思うのです。

『カチューシャの唄』と同じく劇団芸術座の公演、『その前夜』(ツルゲーネフ原作)の劇中歌として1915年に発表されて大ヒットしたのが『ゴンドラの唄』

命短し 恋せよ乙女
あかき唇 褪せぬ間に…

フランスの作家ジョルジュ・サンド(1804~1874)の言った、

愛せよ。 人生において最良のものはそれのみである。

と言う言葉が想い起されます。

それにしても、『カチューシャの唄』『ゴンドラの唄』ともに、当時レコードで発売され大ヒットしたそうです。
しかし、蓄音器(レコードの再生機です…念為)はまだまだ高価で、一般家庭に普及していたとは言い難い当時の情勢。
レコードの10倍近く歌本や楽譜が売れたと言います。

ジョージ・ガーシュウィン(1898~1937)が出版社のアルバイトとして、街頭でピアノを弾いて自作や新作の楽譜の宣伝をした、と言う話も思い出します。
現代にようにいつでも音楽が溢れて氾濫しているわけではなかった当時。
だからこそ音楽がもっと貴重で、そして愛されていたようにも思うのです。
人々は楽譜や歌本を買って帰って、それぞれ歌ったり演奏したりして音楽を楽しんだのでしょう。

さて、中山晋平さん、1952年の12月2日に映画を見た翌日に倒れ、12月30日に亡くなりました。
その映画と言うのが、黒澤明監督の『生きる』
末期がんに侵された主人公が自分なりに自分の生き方を見つけて、最後に雪の夜に公園のブランコで歌う『ゴンドラの唄』を、中山晋平さんはどんな思いで聴いたのでしょう。

今年で100歳になる『カチューシャの唄』を演奏して、いろいろ考えた春の日でした。

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