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2015年7月10日 (金)

雲の通い路

雲が速い

湿気は好きではないが雨は好きだ。
静かに、落ち着いた気持ちになれる。

手術が決まってから、怒涛のように時が過ぎる。
レコーディングから合唱、オケ、オペラ、吹奏楽、本番、と一週間で。
家には帰れない。

分厚い雲は光を閉ざし、仄暗い。
暗く、沈む気持ちになるか、と言うとそうでもない。
しかし、ちょっと頭が重いのはたぶん鎮痛薬と低気圧の所為。

その幾重にも重なる墨絵のような濃淡のモノトーンから、一条の光が落ちてきた。
まるで天使の通り道のようで、「あれ?お迎えかな?」なんて思ったりして。
あれはヤコブの梯子?

シェーンベルクの描いた『ヤコブの梯子』には届かなかった憧れが隠されている。
夢の軌道エレベーターは実現可能なところに近づいている、と言う。

だが、今日の光は違う。
あれは「雲の通い路」

天津風 雲の通い路 吹き閉ぢよ

       乙女の姿 しばしとどめむ

祖母の十八番だった一歌。
もちろん大人気の歌だが、子供の頃から僕はちょっと切なかった。
失われ往くものへの哀切が詠われているように思うから。

ああ、おばあちゃん、僕は頑張れているでしょうか?
あなたに胸を張って会えるでしょうか?

きっと時間にして十数秒の刹那の奇跡。
天津風は吹くことなく、乙女の姿は掻き消えた。

でも、目に焼き付いたあの光は、
僕をもう少しだけ先へと運ぶだろう。

あの光でご飯が三杯…
いや、曲が1曲書けるだろう。

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