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2015年7月15日 (水)

秘儀Ⅲ~演奏①

秘儀Ⅲを演奏面から眺めます。

実は前半の実演についてはすでに触れていました。
秘儀Ⅲ~その⑥
その補足と後半のお話を。
 
解説した通り全体は大きく二つの部分からなっています。
「M」までの前半とそれ以降の後半。
さらにそれぞれが二つに区分されて、全体では4つのセクションに別れています。
それぞれのセクションの前では音量の増大と速度の増加が見られますが、
第1セクションのラスト(「G」の前)ではaccel.はありません。
この事は全体を構成する上では重要な情報です。
やはり全体としてラストに向かって高揚していくことを意味しているのです。
 
3/4の3拍子で書かれているが1小節一つ振りで振るのが良いと思う、というのもすでに触れました。
ここで注意したいのは、3拍目を下で待つような振り方は良くない、ということ。
表現の機会を少なくしてしまう、テンポが調節しにくい、等々ありますが、もう一つ。
1拍中1-2-3の3が遅くなってしまう危険があるのです。
 
とかく奏者がなかなか抜け出られないのがこの現象。
つまりはテンポが遅くなってしまうのですが、そうはなりたくない。
ので、無理矢理拍頭を合わせる、つまりは1拍中1-2-3の3と次の拍頭が近くなってしまうのです。
簡単に言えば付点のリズム。
じゃあどう振ればよいのか…それは直接伝えないと誤解されそうなのでここでは割愛。
 
ところで、このリズムの大問題、その⑥でも触れています。
口で32分音符を8個(タカタカタカタカ=8部音符2個)刻んでから1-2-3の3を手で叩いてみると顕著です。
とにかく遅い。
次に、同様に口で32分音符を刻みながら3-1を叩くと...早い。
日本全国できっと苦労しているんでしょうね。
僕は1-2-3の2の取り方にもコツがある、と思っています。
実際に踊ってみるとわかってきます。
どこで重力を利用しつつ上行し、どこでそのエネルギーを回転運動に変え、どこで重力を受けて下降するのか、結局指揮法にも繋がるのです。
 
「A」の補足
やはりアクセントを印象的にしたいのです。
特に初めて出てくるアクセントは意味が強いです。
音の出だしにアクセントが不用意に付きがちなので、スラーの切れ目が強調されるのを減らすべく演奏します。
すなわち、頭に空気の固まりをぶつけず、抜けの少ない吹き方で音価ギリギリまで保ちます。
「最後の音をもっと長く」と言うと最後の音だけ不自然に伸ばしがちです。
「スラーの音価をしっかり吹ききる」ということに尽きるでしょうね。
アクセントはタンギングの強さに非ず、息のスピードや圧力に依るのが基本。
言葉のアクセントと同じですね。
その後、アクセントのズレが増えてくると余計に不用意なアクセントが邪魔になってきます。
アクセントばかりになる、というのはつまるところアクセントがないのと同じですからね。
花火の乱れ打ちのようなアクセントの百花繚乱は後々にとっておきましょう。
高音の発音、フレーズ頭やスラーの吹き直し、等に意味のないアクセントがつかないようにすると、実際のアクセントが強すぎずにすみます。
 
フレーズが徐々に長くなってくると、フレーズ後半のエネルギーが落ち気味になります。
「最後の音を長く」と言う呪文だけ残っていて不自然になりがち。
「B」「C」の前など要注意ですね。
 
「B」の補足
冒頭の打楽器のアクセント。
これは効き目あります。
その後の計算が必要ですが...
打楽器の音量変化を効果的に見せつつ、全体のヴォリュームは抑えて第1セクションを作りたいところです。
 
管楽器のcresc.頂点の到達位置のズレはさほど聴き手に印象を残さないようです。
前述の通り不用意なアクセントがついてしまうのも一因でしょうが、揺らぎ程度にしか伝わらないのも事実。
ということは、それはそれで良いのです。
が、この面白さを伝えるのにはこだわりたい!
というわけで、やはり吹きはじめの音にアタックが強くつかないように気を付けます。
それと不用意なアクセント(特にCla.の高音)
 
5小節目からの6小節間、アクセントを活かすと2小節毎のフレーズが生まれます。
楽器と声部が増えれば増えるほど細かい描写は見えにくくなりますから、ここで見えてくるフレーズを丁寧にしかしはっきりと印象づければ、後半への布石になると思います。
 
「C」の補足
やはり金管のアクセントは木管よりも強めの方が効果があるようです。
パート内のアクセントの吹き方について、統一する必要があります。(究極的にはその乱れにも面白さがあるのかもしれませんが...)
Hornは3パートになっていますが事実上2パートのみ。
人数はバランスをとって二分した方が良いでしょうね。
 
「D」の補足
同一声部であるEup.とT.Sax.のバランスに一考。
Eup.は、ちょっとアタックが強く中身が抜ける、と言う演奏にも多く出会いました。
T.Sax.との間でメロディが行ったり来たりする際、楽団によっては人数や音量のバランスの差が大きすぎることがあります。
 
「E」の補足
Trb.のportamentoは僕の場合はゆっくりやってもらいます。「M」でも同様に。
まるで平衡感覚がおかしくなったかのような効果。
C.b.のいない楽団ではTubaに低音Es音のサポートを入れます。
 
ここまで慎重に作ってきた打楽器群でも、この辺りだけヴォリュームが大きく聴こえてしまいます。
気になる場合には、意図的に見えない範囲でバランスをとるのもよいかもしれません。
 
「F」の補足
管弦楽器の精度(特に先行する8分音符)をあげるには指揮のテクニックでやってしまうのが手っ取り早く確実です。
適当にやるとスッキリしないクライマックスになってしまいます。
打楽器の「ff」の前3小節、僕は少しだけcresc.してもらっています。
あまり大きくはcresc.しませんが「ff」は存分に鳴らします。
ここまで、あまり大きく振らず、全体としての高揚を抑えた演奏を心がけています。
 
「G」~「J」
この部分の、それぞれ8声部の重なる4つのフレーズは、色々試してみて、結論として「なにもしない」のが一番良い、とたどり着きました。
と言っても、「何も表現しない」のではなく「意図的な操作は必要ない」と言うことです。
必要なのは「奏者各々は自分の声部を理解して演奏する」「各声部の吹き方はできるだけ統一する」事だと思っています。
 
「G」~「J」の4つのフレーズのうち、特に第2フレーズ(「I」)と第4フレーズ(「J」)には大きな揺らぎがあります。
僕はこの部分の音量変化とアクセントの位置は基本メソッドで統一することにしました。
僕はこんな風にリハします。
・打楽器を除く全8声部を同時に演奏する(1フレーズのみを各声部同時に開始する)→同時に演奏することで、声部間の違いが浮き彫りになる。と同時に内包されている和声主題が顕になる。
・各声部毎に演奏して、音量変化、アクセント等を整理する→特に段階的音量増が前半でやり過ぎるのを徹底して抑える。
・楽譜通りの順番で演奏する(1フレーズのみ)→1フレーズのみだと音量の移り変わりが分かりやすい。
p-mp-mf-fと段階的に大きくなっていく際に、やはりすぐ大きくなって頭打ちになる傾向が出ます。
音量の差は後半の方が大きくなるように設定した方が良いでしょう。
後半の「R」「S」等への布石にもなります。
  
「G」からの4つのフレーズを完全に譜面通りに演奏した際には、前後のフレーズの断片があるため、全体としては結果的に「そのときにfを演奏している声部・フレーズ」が目立つように感じます。
また先程の練習の時のように簡潔ではなく、もっと混沌として聴こえます。
が、丁寧に演奏するとその混沌の中で「p」のパート(フレーズの先頭)も聴こえてきます。
すると、8つの声部の音響的関係が(前半上行、後半下行)見えてきて面白いのですが...
そこはやはり指揮者の耳とセンスに委ねられますね。
「K」の補足
「J」のラスト、全パートにアクセントがつき、そしてstacc.も付いています。
しかし「K」は最後の8分音符にstacc.はありません。
そんな小さなことにこだわらず、そのまま進めていってももちろんいいのですが、僕はこだわって長く演奏します。
cresc.もaccel.も少なく、音の変化をしっかり見せるように演奏します。
「L」からの3小節間は思いの外停滞感があるようで、ここを「ため」としてとらえるかは好みの別れるところ。
僕はここで加速を上げます。
そうすることでまるでジェットコースターの斜度が上がったように感じるのです。
しかし後半のことを鑑みるとここはまだ道半ば。
ほどほどに、とは言うまでもありませんが。
 
後半の話は...続きます。
 
 
打楽器の選択について少し触れておきます。
・Timp.上のTamb.
Tamb.に足をつけたり、振動吸収のパッドをつけたり、ジェルで固定したり、色々と皆さん工夫されているようです。
色々試した中で僕が使っているのは「緩くスタンドに付けたTamb.をしなだれかかるようにヘッドにのせる」方法です。
うまくセッティングすると、人ぐるは長めに鳴り、ヘッドの上での跳ねは極力押さえられ、Tamb.の移動に悩まされることもなくなります。
ダブル・ジングルの重めのものを使っています。
・B.D.
本当は口径の小さめな、チューニングも少し高めの、そして幾分チープな音のするものが好みです。
出来るだけ余韻のない音が良いのです。
前半や小音量の部分ではミュートとして裏面に毛布をかけたりしています。
デッドストロークも良いのですが、チューニングが低めだとうまくいきません。
・Siz.Cymb.
僕が吹奏楽でよく使うのはボールチェーンなのですが、この曲では意外と難しいです。
振動と響きが長すぎることがあるのです。
dim.もとても難しく、一人で演奏する場合は音止めのテクニックが必要です。
そこで市販の、取り付け式のSiz.マシンを使う手もありです。
響きの長さは調節しやすいものの、音量と音色のコントロールは結構難しいようです。
・Gong
これはもう実際に叩いてから買う、に限ります。
ネットで買うのは全くのギャンブル。
もっとも実際に足を運んだとて、望む楽器がそこにあるかどうかも運なのですが...
できるだけ音程の変化の速いものを使いたいとは思っています。
・マレット
Timp.はできるだけ硬いものを使ってもらいます。
ただ、体重の乗らない音にならないように、最終的には奏者本人のチョイスに任せます。
B.D.も同様ですが、やはり前半はかなりシャープな音がほしいので硬めにしてもらっています。
やはりヘッドとの相性に帰結しますが(^_^)

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コメント

参考にさせていただいてます!!!
でも、あまり根詰めないでくださいね・・・。

投稿: Anton | 2015年7月15日 (水) 22時56分

お願いですー。
早く後半も教えてくださいー。

投稿: | 2015年7月27日 (月) 11時49分

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