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2015年8月30日 (日)

始まりと終わり

「始まれば終わる」
これは僕ら舞台人の定番の言葉。
祈りのような、呪いのような言葉。
 
意味は二つ。
早く終わってほしい、という消極的な意味と、
終わってほしくない、という願いの意味と。
もちろん後者のはなし。
 
夏が終わる。
大好きだったあの人たちに会えなくなるのだ。
  
5年間かけて準備をしたオペラが今日終わる。
始まりはいくつもあったが、終わりはすべて今日。
終わりたくはない。
が、終わらなければ次は始まらない。
 
舞台というのは、様々な人の想いの積み重ねで創られる。
このオペラにか変わった人々はそれぞれ、明日をどんな気持ちで迎えるのだろうか。
全三幕の、最後の一瞬をどんな風に越えていくのだろうか。
僕らはみんな知っている。
「終わりは始まりである」と。
  
指揮者、というのはかっこ良く言えば、音と言う名の想いを紡ぐ職業だ。
今回も僕は指揮をした。
ただし本番で指揮は振らない。
もちろん、僕の能力はフルに使ったし、思い入れも深い。
だが僕の想いがどこへ到達するのか、今はまだよく分からない。
 
とはいえ、やはり本番でも全曲カゲで振る。
指揮台も譜面台も置けないので暗譜で振る。
一人で振る。
 
愛すべきオーケストラだった。
素敵な歌声だった。
素晴らしい有能なスタッフだった。
そして、音楽たち。
でも、もっと出来たかもしれない。
出来るに違いない。
 
旅はその道程にこそ目的がある。
と、教えてくれたのは祖母だ。
山に登るようにひとつのステージに挑む。
一歩一歩自分の足で登りたどり着いた頂上では、何故だか涙が溢れて止まらない。
高くても低くても。
 
一つの旅が終わり、また次の旅が始まる。
大きく見ればすべてが旅の途中。
 
今日見る頂の景色はいったいどんなだろう。
僕はどんな想いでそこにいるのだろうか。

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コメント

夜分に失礼します。昨日はは本当に本当にお疲れさまでした。昨夜は美味しいお酒飲めましたか?暑い時期でもありいろいろ大変でしたが歴史的な舞台にたくさんの想いをのせて一緒に過ごせたこと誇りに思います。友さんは合唱の私達にとって一緒の舞台に立っている大切な指揮者でした。だから安心して舞台に立てました。本当にありがとうございました。終わりに近づくにつれて寂しさと切なさがありましたがこの舞台がまたたくさんの人に観てもらえますように。また協力できますように♪ご一緒できますように♪と思いました。お身体大切に。また、ゆっくり浜松にいらしてください。楽しい素敵な時間をありがとうございました

投稿: らん  | 2015年8月31日 (月) 03時46分

オペラお疲れ様でした。西村さんが声を枯らしながら歌って指揮をして下さったおかげで、ほぼ初見で練習に参加していた私たちは大変助かりました。共演の機会があると嬉しいなと思っています。ますますのご活躍をお祈りしています。

投稿: ビオラトップ妻 | 2015年8月31日 (月) 22時39分

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