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2016年8月 4日 (木)

ある英雄の記憶②

毎年、課題曲のアナリーゼ載せてほしい!との声が届きます。
今年は自分の曲もあるワケで、ぜひ書きたいんだけど…
もちろん他の曲も…
時間がないのです…
Pokemon Goも始まったことだし…
 
とりあえず、要望の多かった「ある英雄の記憶」中間部「I」のコード進行です。
Img_0406
よく見ると微妙に間違ってますが…
冒頭NC(コード無し)の部分は本当はG7ですね。
和音の取り方はdim(ディミニッシュコード)ととらえても音楽の意味はつながると思いますし、借用の末の転調ととらえても構わないと思います。
激しい戦いの末に傷つき倒れる少年…
彼の耳に優しい声が響きます。
「…だいじょうぶ。あなたならだいじょうぶ。きっともう一度立ち上がれるわ…」
「その声は、ニーナ(仮名)…?でも、君は、君は…」
「私はずっと一緒にいたのよ。あなたの心の中に、あなたとともに…」
「でも、僕はもうだめなんだ…みんなも僕を必要とはしていない…」
「思い出して、昔の自分を。夢と希望を信じて、一緒に野山を、海辺を走ったあの頃を…」
c mollのV、Gのコードで倒れた少年。
c mollの平行調であるEs durのIIのコードFm7で心配そうに、優しく話しかけるニーナ。
美しい転調を重ねAs durに解決します。
僕が思うに、和音の中の「9の音」と言うのはとってもヒロイックな音。
古今様々な曲、特に英雄の登場する曲では必ずと言ってよいほど「9の音」が活躍します。
試しにファイナルファンタジーのテーマをピアノで弾いてみよう。
ドレミソドレミソドレミソ…そう、このレの音が英雄。
「英雄の記憶」の冒頭、ファンファーレにも表れます。
 
そして4小節目の1stTrp.のFの音。
G♭M7(メジャーセブンス)の7音として登場した「F音」は短い時間にたくさんの和音を旅し、その間常に「F」であり続け、練習番号「A」ではとうとうメロディたちの奏する「F音」、Es dur主和音(E♭9)の「9の音」へと行きつくのです!
このEs dur、すぐに平行調のc mollに移動します。
 
…Es durからc moll…?
そう、中間部ではその逆が起きるのです。
このc moll、かのベートーヴェンも運命と闘った、象徴的な短調。
この調から練習番号「D」ではc mollに戻らずg mollに回り道します。
ベートーヴェンの交響曲第1番の冒頭のように…
そう、それは避けては通れない大切なものへのアプローチなのです。
先日、東京佼成の指揮者、大井さんが「このすぐにc mollに行かないあたりがとっても友さんらしい」と言っていました。
まったくその通り、さすが大井君。
そこまで読みといてくれた人は初めてです(*^_^*)
 
さて、「I」からの中間部でも「9の音」はたくさん出てきます。
でも、ほとんどの「9音」はフラット(下方変異)、と言うか短調のナインス。
やはり少年は傷つき、悩んでいるのです。
ところどころナチュラルになる「9音」に何を見出せるか…
そしてAs durへと行きついたわけですが、Es dur、As durと来たら、次は?
そう、Des dur。
この曲のラストの音を見てみよう。
 
また脱線しちゃいましたが…
As durになったところで場面は一変します。
この作曲家はどうやらメジャーセブンスが大好きなようです。
解決したAsを保留して、Aのメジャーセブンスの「7音」に仕立てています。
ここはきっと少年とニーナの過去の世界、夢の世界…
しかし現実へと少年は戻ります。
「ニーナ、行くな!行かないでくれ!!」
少年は目を覚まします。
知らぬ間に涙はとめどなく流れ、横たわった草葉を濡らします。
傍らに咲くのは可憐で小さなうす紫の花。
「やっぱり僕は、、、ひとりだ、、、」
いいえ、一人ではありません。
つぎつぎに声が聞こえます。
「一人じゃないよ」
「一人にしないよ」
月が、星が花が、草が、風が、ニーナが…
少年の心の叫びむなしく、現実世界c moll(Es dur)に戻りますが、もう一人ではありません。
そして再び少年は旅立つのでした。

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コメント

初めまして。
一般団体で指揮をしている者です。
今年のコンクールで課題曲Ⅲを演奏させていただきました。
残念な結果に終わってしまいましたが(涙)
ほんとに魅力的な課題曲✨ありがとうございました!
なのに上手くできなくて西村先生にも『ある英雄』にも申し訳ないです。。
youtubeのクリニック、ブログ等
すごく刺激を受け、勉強させていただきました!
本当にありがとうございました!
また、がむばります!

投稿: 週一指揮者 | 2016年8月18日 (木) 01時07分

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