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2020年9月 5日 (土)

稲妻の日

すさまじい稲光。
深く垂れこめた雲のせいで稲妻は見えず、雷光を映して空が紫に染まる。
きっともうすぐ、激しい雨が降るのだろう。

若かりしとき、仕事がなかった代わりに時間だけはたっぷりあった。
お金も全然なかったが、なければないなりに何とかなるもので。
僕は、食べたいものを食べ、見たい景色を見に出かけ、会いたい人に会いに行った。

そしてたどり着いた結論は、
「僕には食べたいものがあり、見たい景色があり、会いたい人がいる」
そう、「僕には欲しいものがある」という単純なもの。
けれど、それがとても大切なことだったのだ、と思っている。

予定に追われていると、だんだん見えなくなってくる。
濃い味に慣れてしまうと、繊細な感性を曇らせてしまう。
忙しく充実した日々はその実、僕の心の感度を鈍らせていたのかもしれない。

そんな中でも、少しでも見失わないように、心を広げてきた。
青空に雲を追い、月に照らされた自分の影を踏み、目を閉じて風を聴いた。

ああ、でもやはり、心はかなり曇っていたに違いない。
今感じる風の匂いは、遥かに複雑で繊細だ。
毎秒移り行く季節と風景は、毎秒心を揺り動かす。
ああ、この気持ちを何かに描きたい。

忙しい日々が戻ってこようとも、この気持ちは忘れたくない。

僕には欲しいものがある。
食べたいものがあり、見たい景色があり、聴きたい音、描きたい音楽がある。

会いたい人がいる。

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