秋風の吹く
しばらく甘いものを我慢して、久しぶりにチョコなんて食べたりすると、その甘さ、美味しさに身震いする。
何の話かって?
感受性の話。
ミュージカル「家なき子」の中にこんな歌詞がある。
「いつも朝はひとかけらのパン 夕食は塩とジャガイモだけ
でも今日は~♪」
清貧の母子がごくたまに口にできるごちそうのパンケーキについて歌う。
今の僕らにとってごくありふれた、小麦粉と卵とバター。
主人公レミたちにとって、それはもう大変なごちそうなのだ。
宮川彬良さんのメロディは、嬉しくってもったいなくって、少しずつ確かめるように準備をして、時々顔を見合わせてはつい笑みがこぼれてしまう、そんな慎ましい喜びを歌わせてくれる。(作詞は「襟裳岬」等でも知られる、岡本まさみさん)
日々の忙しさの中で、空を見上げることも忘れ、夢を見ることも忘れ、刺激に慣れ、濃い味に慣れ、つい当たり前のことのように思えてしまう。
水も空気も命も音楽も、そこにあること自体が奇跡のようなものなのに。
感性を磨くのと感受性を高めるのとはちょっと違う。
しかし、感受性なくして感性は膨らまない。
「慣れ」はそのアンテナの感度を鈍らせてしまう。
だんだんと色濃くなっていく秋。
空の高さに、匂いに、音に、風の肌触りに、明日の予感に。
心のセンサーの感度は高く持ち、しかし因習と慣習の中に埋もれぬよう、新たな日々の音を感じ続ける。
それだけは大切にしておきたい。
…ちなみに、チョコは毎日食べてます。
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